繋いだ手

SSS-6-「ネジの巻き方」

ようこそ、SSSの裏側へ。



いつの頃からか、ネジを巻くだけで生きる、この機械人間の世界の終わりを誰かが囁き始めた。それを僕らは鼻で笑い、日常を過ごしていた。しかし、その囁きは徐々に質量を持ち、やがて現実となった。
僕も、僕の恋人もネジを巻く回数が多くなった。
そのうちに、僕らは言葉を発することが出来なくなり、それに合わせるように体の動きが悪くなった。
多分、近いうちにネジを1巻きしても、ネジを1巻きするだけのエネルギーしか出せなくなるだろう。
僕は、残り少ない力で恋人との距離を縮めて、恋人の手を握った。握り返すその手が、暖かく感じた。そして、僕と恋人はネジを1巻きしても、ネジを1巻きするだけのエネルギーしか出せなくなった。握った手は永遠に離れることはなくなった。それだけが、僕には嬉しかった。
周りで聞こえるカチリカチリという音が、僕らを祝福する拍手の様に聞こえた。